鳳凰三山でクマに出会う

とりおたです。


今年こそちゃんと体を鍛えて、でかい山に挑戦しようと、毎週末小さな山に登り体を慣らしているところです。


それで 地蔵岳へ御座石鉱泉から向かうコースで、途中に燕頭山というのがありまして、中途半端ですがそこまで登って引き返す予定で、登り始めました。


つばくろあたまやま と読むみたいです。





これ、飯盛山で撮ったものなんですが、四年目くらいになるのかな、この靴がいつもかかとが擦れて登山は大変な苦行になってしまうのですが、ついになじんできたのか、どこも痛くなく快適に登れるようになってきました。


そして とにかく初めを飛ばさないで、ゆっくりゆっくり行くと登りやすいことがわかってきたので、あせらずゆっくり登りました。


このコース、とても斜度がきつい上に眺望もきかないせいか、人気があまりなく、この日も土曜でしたが、駐車場には私ともう一台のみ。あまり人がいないことがわかっていました。


斜度がきつくて眺望もないですが、樹林帯の雰囲気が好きで、こういう山は落ち着くんです。


ただ今回やはりスタートが遅かったのは失敗の一つだったでしょうか。登り出したのがお昼でしたので。


急坂ではありますが、ごくごくゆっくり登ったため、あまり体を疲れさせず、かなり上まで順調にきて、あとすこしで目標の燕頭山につきそうなところでした。


ガサゴソとなにかレジ袋をかしゃかしゃさせるような音が遠くから聞こえて、何者かが走っているようです。


もうその瞬間 とても嫌な予感がしました。ああこれはいかん。


心の奥底ではもうわかっていましたが、人間、現実として認めたくないものなので、ん?トレランの練習してる人かな?みたいに、逃避の思考が出てくるんです。


でも、人間に出せる音じゃないな。これはちがう。まず確認しないとということで、谷の方をのぞきこんだわけです。


え?こんな近くにいるの?というくらいかなり至近に、真っ黒いかたまりが。


すごく遠くに聞こえたのに、あっという間にここまで距離を詰めていたのか。クマは走るのが速いとは知っていましたが、ここまでとは驚きました。


一人で山に入ればいつかこういうことがあると覚悟をしていて、クマに関する書籍はだいぶ読んで、ネットでもできるかぎり情報を集めてはいました。しかし、実際にこうやって遭遇すると、なかなかどうしていいかわからなくなるものです。


クマ鈴はつけた方がいいという説と、そうじゃない説がありまして、わたしは、鈴のせいで自分が周りの様子に気づかないことが怖いと思って、つけない派できていました。クマスプレーも持っていなかった。


なんかそんなこともちらっと後悔しつつ、まずクマと目を合わせないほうがいいことを瞬時に思い出し、すぐ登山道に戻りました。うまく説明できませんが、登山道からは、クマが見えない感じなのです。斜面の反対側、という位置関係。


すぐに距離をとってしばらく待ちました。その間2分くらいだったと思います。ものすごくいろんな思いが頭のなかをかけめぐりました。みたら膝もカクカク震えています。


でもなんかこのとき直感的に思ったことが、野生の生き物は、感覚がするどく、こちらの気持ちなど読めるんではないかなということです。あまり恐怖の波動を出すと危険だなと。


ここでわたしはナウシカになったつもりで、ごめんねあなたのなわばりをじゃまして。あなたの敵じゃないから許してね。


そんなことを思っていたら、クマの方もわたしに気づいたのか、あんなにシャカシャカ元気に走っていたのに、ピタッと止まって気配すら消しました。


しばらく待ちましたが、このままここにいるのも、絶対だめだろうと。思いついたのは、クマは早く行けとこちらに対して思ってるのではないか?ということです。


ただ、降りるためには、一度クマの方に近づいていかないとならないという状況だったのです。斜面をへだてて、お互いが見えない状況だったのが幸いして、寄って行っても見えてはいないのですが。
それがまたいろんな想像をかきたててきます。


でもこのまま待っていられない。クマを刺激しないよう、できるだけそおっと降りよう。


ゆっくりゆっくり降り始めます。逆にこのとき、少しだけ音を出すように意識しました。こちらから撤退しますよとクマにわかってもらうため。


全身耳にしてクマの動きを警戒して降りたのですが、本当に、ピタッと動かないんです。むこうも嫌なんだろうなと思って、少し落ち着けたかな?いや、そんな余裕もなかったですね。でも、こっちに寄ってきてないのは助かりました。


もし寄ってきてしまったら、リュックを置いてそれに興味を持たせて、ゆっくりあとずさり、と言うことなのですが、急斜面すぎて後ろ向きには行けないというかなりこまった状況でした。なのでクマがじっとしてくれていたのは助かりました。


ゆっくり、ゆっくり降りましたが、ぜんぜんクマが動かないので、ずいぶん距離を取ることができました。よし、ここからは逃げに入ろうということで、もう、走りました。


急斜面、大石がゴロゴロする歩きにくい登山道ですが、ストックを駆使しながら駆け降りました。トレランの選手もびっくりするような速度を出していました。
自分は下りが得意だとこのとき初めて知ってしまった。


飛ぶようにかるわざ師のように。軽快に舞い降りました。火事場の馬鹿力ってこういうこと?みたいな。


降りながら思ったのは、クマは他にもいるかもしれないということ。もう、とにかく、無事に車に乗るまで安心できないなと。


で、光の具合も良くてきれいな葉っぱなんかを何度か見つけましたが、カメラをザックから出す気持ちのゆとりもなくて、とにかく下へ下へと急ぎました。二時間半かけて登った道を30分で降りて来ていました。時計見てほんと驚きました。え?まだこんな時間?って。


なんとか無事に車に戻れました。
なんとか生き延びることができました。


で、クマ鈴なんですが。
今回鈴がなかったおかげで、相当早い段階でクマに気づいて先に動けたというところはよかったのですが、クマの方でこちらに気づかず、かなり接近してしまったというのは失敗だったと思います。


鈴つけていたら、向こう側で回避してくれて、出会わなかったかもしれない。


ただ、クマに個体差がすごくあって、人を怖がらないクマで、好奇心旺盛なのだと、ここに人がいまーすってアピールになってしまうという話も、なくはないんですよね。人が弱いと学習してしまっているクマには逆効果。


わたしはそちらを重視して、鈴をつけない派でしたが、これは考え直す時期にきたのかもです。


バランスをとるには、鈴を鳴らしつつ、たまに止めて、あたりの様子を伺う。ちゃんと自分でもまわりの状況を把握し続けて、異変になるべく早く気づくようにする。このへんがベストではないにしてもベターなのかなと。


人気のないひっそりした山ってすごく好きだったのですが、これからは混んでるところに行くようにしたほうが、クマも出てきづらくて安心かなと思いました。せっかく体力もついてきてこれからというところでしたが、なにかあっては人にも迷惑がかかるので、しばらく自重しようかなと。